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2021年5月5日観戦メモ

 

今年始めてカープの試合をプレイボールからゲームセットまで観戦できた。

ひどい状態だった。全くチームマネジメントができていない。今年はおそらく最下位だろう。

 

思うように勝てなくて首脳陣は平常心を失っている。冷静な判断と緻密な計算ができていない。セオリーと臨機応変のバランスが取れていない。得点を渇望するあまりに変なことをして1点を取りに行くことが多い。その結果、バッターから集中力を奪っている。チームの得点圏打率の低さ、残塁の多さはそこに原因がある。

 

例えば1回裏、先頭バッターの菊池がヒットで出塁して2番羽月。送りバントはセオリーとして当然だろう。2ボールナッシングになった場面でそのままバントさせたが(結果はファール)なぜ1球待てない?プロならば1ストライク取られても次にバントするには何の問題もないし、フォアボールを取ってノーアウト1,2塁になれば大量点のチャンスではないか?

 

3回裏、2アウト3塁で菊池の場面でセーフティースクイズをさせたが(結果はファール)、打率3割5分以上の首位打者にそんな奇をてらったことをさせる必要があるのか?変なことをさせてカウントが不利になるから自由な打撃ができず、得点圏打率が低くなるのだ(現時点での菊池の得点圏打率は2割2分6厘)。菊池はもともと器用で足も速いので、どうしても1点が欲しくて小細工をさせたくなるのだろうが、そういうのは打率の低い打者にやらせるべきであり、首位打者には普通に打たせるべきである。これらは特に首脳陣の余裕のなさを表している。だから原監督に手玉に取られることになるのだ。

 

この日は見られなかったが、記録を見ていると無謀な走塁が目につく。「何をやってくるかわからない」というプレッシャーをかけたいのだろうが、奇襲は頻度が高すぎるとプレッシャーにならない。そもそも、成功率の低い作戦では威しにならないし、相手を助けるだけだ。例えば5月3日の6回裏。西川が盗塁に失敗し、結果この回はヒット2、四球1で無得点に終わったが、西川の盗塁成功率はそんなに高いのか?ピッチャーがあたふたしてランナーを出してしまっても勝手に暴走してアウトになってくれるのだから、相手チームは今頃鼻で笑っているだろう。その結果、相手投手は調子を取り戻して好投することになるのだ。この状況は緒方監督の初年度2015年に似ている(あのときも各種指標はセリーグでトップクラスだったが結果は4位。)。

 

ここで強調しておきたい。成功率の低い作戦で大切なランナーをどぶに捨てることを機動力とは呼ばない。

 

それから、各バッターが粘れておらず、相手投手の球数を増やせていない。これは待球作戦をしろ、という意味ではない(プロの投手相手に待球作戦など無意味だ。2球で追い込まれて苦しい打撃をする羽目になる)。初球でも甘い球は強打する、というプレッシャーをかけつつ、運悪く追い込まれたらボールになる球を見極め、きわどい球はファールで粘って打てる球を待つ、ということがほとんどできていない。この戦略の中心にいた、強打かつ選球眼の鬼の丸がいなくなったのである程度は仕方がないが、それにしてもあまりにもあっさりとアウトになりすぎている。これでは相手先発は気持ちよく7回まで投げ、8回からはエース級のリリーフが続く、という展開になってしまう。それではさすがに勝率は低くなる。

 

あとはチームマネジメントに関して。9回表に2アウト2,3塁から前進守備の外野の頭を越されて2点を追加された場面。ヒットを打たれて4点目が入れば、得点能力の低い現在のチーム状況では逆転の可能性は極端に低くなるから前進守備を選択し、結果的に外野手の頭を越されてしまった、という結果論に見えるが決してそうではない。このとき解説の藤川氏が興味深いことを言っていた。「自分は(ストレートが浮き上がる)4シームで押す投手なので(相手打者はボールの下を叩くので)フライが多くなる。なのでこういう場面では外野手を後ろに下げるように、チームにもお願いしていたし外野手にも話していた。岩瀬投手は逆にゴロP(スライダーが主戦なのでゴロが多くなる)なので、この場面では前に出てきてもらっていた。大道は自分と同じ4シーム投手なので、前進守備は危険だと思う。」(実際にこの回大道が取った二つのアウトは両方とも外野フライ。)つまり現在のカープは、選手の特徴の分析が適切に行われておらず、このようなチーム内でのコミュニケーションもおそらく取れていないのだ。この状態では選手の特徴に合わせた成功率の高い作戦はとれない。敵を知る前に己を知らなければさすがに勝てるはずがない。おそらく今後も凄い勢いで負けていき、近いうちに横浜にも抜かれるだろう。

 

今シーズンの浮上はもう望めない。来シーズンに備えて選手の特徴を見極め、チームの再構築に備えるべきだろう。

 

以下、気になった選手について。

 

羽月

 

この日はあなたのせいで負けた形になったが全く気にする必要は無い。送りバントは失敗することがある。センターフライを落球して2点目を取られたが、これは急造外野手にセンターを守らせているチームの責任だ。あなたはこれからのチームに必要な選手だから、ただ精進を続ければ良いだけだ。この日気に入らなかったのは4回裏の2打席目。3ボールナッシングになったにもかかわらず、結局あっさりと三振に終わったが、あなたはこの場面で確実に四球をもぎ取らなければならない。アウトになるにしても、少なくとも10球くらい粘れなければならない。非力、低打率のバッターがこういう場面で四球を選べないようでは、すぐに1軍に居場所はなくなるだろう。

 

高橋昂也

 

大手術の後なので大変気にしていたが、見事であった。特に4回表のノーアウト2,3塁の場面で、決してあたふたすることなく、犠牲フライの1点だけで切り抜けたのは素晴らしかった。まだまだ万全ではないのだろうが、今年1年けがをせずに乗り切れれば、来年には元巨人のエース内海の全盛期に勝るとも劣らぬ左投手になるだろう。

 

石原

 

近い将来の正捕手として期待されている、という報道を先に見ていたが、その通りだとの印象を持った。盗塁も刺したし、思い切りのよいバッティングはもちろん、高橋の特長にうまく合わせたリードをしていたように思われる。6回まで87球で収めたことから、カウントを悪くせず、大胆にストライク先行で少ない球数で抑えたことがうかがわれる。かといって大胆さばかりではないのが非常に良いところだ。特に6回表ウィーラーを迎えた場面、解説の藤川氏が指摘したように追い込まれてからカットボールを嫌がってウィーラーがベースから離れるように立ち位置を変えた場面、藤川氏は「外角の球で終わりですね」と言ったが、すぐに勝負に行かず、一度外角のボールになるストレートで様子を見たシーンが気に入った。ベースから離れることによって外角へ投球を誘導するための罠の可能性を確認したのだろう(外角の球に踏み込んで打ってくるかどうか)。場面によって大胆さと慎重さを使い分けられるリードができるのは大変素晴らしいと思う。(藤川氏がすぐに勝負に行くように言ったのは、全盛期の藤川氏のストレートは小細工して打てるものではなかったからだ。)

 

大道

 

テレビで見るのは確か3度目だが、3度とも同じ印象を持った。あまりにも変化球の精度が低すぎる。落ちないフォークの頻度があれだけ高いと、近いうちにつるべ打ちをくらうだろう。今抑えられているのは、大道の特長であり、なおかつ投げてくる比率の高いストレートをみんな狙っているからだ。だから高めに抜けたフォークにびっくりしているだけだ。まだ「ストレートは通用する」という良い印象を持っているうちに2軍に行って技術を磨くべきである。先頭の坂本を四球で出してしまったことから、それほど鋼のメンタルを持った投手ではないと思われるので、自信が粉々に打ち砕かれた後では再起不能になる可能性がある。狙われても打たれないストレートを持っているのだから、是非大事にして欲しい。

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